プラスチックのリサイクルには、燃焼補助剤として使うサーマルリサイクル(実際には再生しないのでサーマルリカバリーと呼ぶ場合もある)、劣化したプラスチックとして粉砕して再生するマテリアルリサイクル、分解して原材料まで戻して再生するケミカルリサイクルの3種類があり、再生品の利用幅が最も広いのはケミカルリサイクルだ。ただし、ケミカルリサイクルにはこれまで設備が大掛かりになり初期投資額も、運用に使うエネルギーコストも高いという欠点があった。
この問題を解決するため、マイクロ波化学株式会社(大阪府吹田市/吉野巌社長)は、廃棄プラスチックをマイクロ波により熱分解し、基礎化学品に戻して新たな製品の原料とするケミカルリサイクル技術を用いた小型のケミカルリサイクルの連続式実証機をつくり、実証機を2024年5月に大阪事業所(大阪市住之江区)に設置して実験を開始する。検証する項目は下記の4点だという。
・残渣が発生する廃棄プラスチックを連続して分解することで高効率性を実現
・廃棄プラスチックの組成と目的回収物に応じたマイクロ波プロセスの運転が可能
・廃棄プラスチックの処理量に対して装置を小型化(省スペース)
・CO2排出量の削減、及び熱効率改善による省エネルギー化
同社は、電子レンジと同じ原理で、対象物質を直接的かつ選択的に加熱でき、エネルギー効率が高いとされるマイクロ波を用いたケミカルリサイクル技術プラットフォーム「PlaWave®」をNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受けて開発しており、2022年11月には国内初となる1t/日の処理能力を持つマイクロ波を用いた大型汎用実証設備を完成させた。
この技術は、さまざまな種類が混じった廃プラスチックでも、マイクロ波を使って分解し純粋な素材だけを取り出すことができる。今回の実験機は非常にコンパクトな設計で、廃プラスチックが出る工場などに設置して、その場で処理が行えるようにした。これにより、プラスチック製品の成型工場内で廃プラスチックの再生ができるようになる。
また、再生可能エネルギー由来の電気でマイクロ波を発生させることで、実質CO2フリーにもできるため、サーキュラーエコノミーとカーボンニュートラルの実現にも貢献しそうだ。実証実験の結果に注目したい。