一般的なペロブスカイト型太陽電池は、折り曲げ可能で安価に作れるが、材料となるC60フラーレンが作製直後から薄膜形態が変化するために寿命が短いことが課題になっていた。名古屋大学の松尾豊教授らの研究グループは、新開発のフラーレン誘導体を電子輸送層に用いることでシリコン並みの長寿命化を実現することに成功した。この技術によって従来のペロブスカイト型太陽電池に比べ寿命は2~4倍となり約20年使用できる見通しだ。
また、寿命が長いだけでなく、高い熱安定性と耐光性をもつn型有機半導体は塗布でも蒸着でも成膜できるため、結晶を成長させて作るシリコン型に比べて製造コストを約半分にできる。
今後は企業と製造法を工夫して2020年代後半の実用化をめざしていく予定だ。
<ポイント>
・次世代太陽電池として注目されるペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた最大の課題は耐久性向上である。
・真空蒸着が可能で、形態的に安定な薄膜を与えるフラーレン誘導体を開発した。
・電子輸送層として用いることにより、ペロブスカイト太陽電池の耐久性を向上させた。
・有機光ダイオード等、有機エレクトロニクスの発展への貢献も期待される。