2023年3月27日に、欧州のEU理事会が「e-fuel(イーフューエル=合成燃料)」で走る自動車を内燃機関の特例として2035年以降も販売可とする決議をしたため、にわかにe-fuelへの注目が集まっている。
e-fuelの基本素性はガソリンと同じなので理論的には既存のエンジンが使えるため、発電機としても期待が大きい。
e-fuelはCO₂と水素を合成して製造するが、ダイレクト・エア・キャプチャ(DAC)技術でCO₂を大気中から回収するのか、燃焼によって生まれる排ガスを使うのかによって評価が分かれる。工場ならガスバーナー等のスコープ1設備から排出される産業排ガスを活用できる。なお、大気から回収するしくみとしてはデンソーの「大気CO₂回収システム」などがある。
また、組み合わされる水素も、水を電気分解したときのエネルギー源が化石燃料由来だとグレー水素、化石燃料でもCO₂回収していればブルー水素、再生可能エネルギー電力ならグリーン水素と呼ばれ、カーボンニュートラルとしては評価が異なる。
日本政府が推進するブルー水素(化石燃料由来だが製造工程において排出されるCO₂を回収・貯蔵することで排出を実質ゼロとみなすもの)がIEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)に認められるかが注目されていたが、1kgの水素製造で排出されるCO₂が7kgを下回ればグリーンとみなすという炭素集約度の指標が2023年4月11日に発表され、国際社会においてブルー水素がグリーン燃料として認められる目処が立った。
e-fuelが注目が集まる理由のひとつがエネルギー密度の高さで、カーボンニュートラル燃料の切り札として注目されている水素と比べると、その密度は一目稜線だ。ちなみに、体積エネルギー密度で比較するとリチウムイオン電池では200~300Wh/L程度しかない。
高圧水素:1,290Wh/L(70MPa)
液体水素:2,330Wh/L(マイナス253℃)
e-fuel:9,000~10,000Wh/L程度(ガソリンと同等)
また、e-fuelは常温で液体であり、取り扱いに必要な免許もガソリンと同じだから、ユーザーに供給するインフラもそのまま使えるというメリットがある。なお、e-fuelはガソリンの代替燃料のことを指すことが多く、ディーゼル(軽油)の場合は「e-diesel」と呼ばれている。
ただし、原理的にはガソリンと同じに扱えるはずだが、発電機となると内蔵されているエンジンを製造しているメーカーが「保証する」かどうかがポイントとなる。たとえば、発電機メーカーとしてはデンヨーなどが有名だが、エンジンはヤンマー製などを調達して組み込んでおり、エンジンメーカーがe-fuelでの使用を保証すれば使用できるようになるとしている。
ちなみに、発電機で使われる「kVA」は「kW」に換算するときの係数は0.8で、45kVAなら36kWの発電能力ということだ。
また、水素と同じように、現時点ではe-fuelは高価で1L当り700円程度と試算されており、CO₂(二酸化炭素)を、まず一酸化炭素に電気分解してから水素と合成させるフィッシャー・トロプシュ反応を用いた製造方法では1L当り200円程度までしか下がらないと予測されている。回収した気体に含まれる窒素などとも分離しないと合成できないので、それぞれの工程で電力を使う。電力の調達がカキとなりそうだ。